Googleクラウドの理想型は、昼の太陽(ソーラパワー)で電気エネルギーを蓄電し、夜(月は夜の比喩)月の出ているときにデータセンターのCPUを動かし、昼より気温の低い夜の外気でCPUを冷やすのだ。そしてそのコンピュータパワーを地球の裏側の昼の世界へインターネット網を介して送り出す。これがGoogleのMoon Cloudの基本コンセプトだ。

人類のエネルギー革命は、化石燃料からどれだけ効率よく電気エネルギーを取り出すかという歴史と、どれだけ効率よく電気エネルギーをA地点からB地点に運ぶか、ということだ。残念ながら今の技術では、電気を損失させず地球の裏側に送り出すことも無線で送ることもできない。(R&Dの範囲では出来るが実用的でない)なぜエネルギー損失が起きるかというと電気エネルギーがアナログエネルギーであるためだ。音楽がレコード(アナログ)からCD(デジタル)に変わったように、電気エネルギーをアナログからデジタルに変換してしまえば、地球の裏側に1秒以内にエネルギーを送り出すことができる。

~中略~

夜は昼より気温が低い。

たったこれだけの理由だ。」

月を追いかけるGoogleのクラウド – 渡部薫 @sorahikaru : アゴラ

ひたすら壮大な計画ですね。

少し前からGoogleデータセンターの最もコストがかかるものは、近いうちにハードウェアではなく電力になると言われていましたが、ここまで考えているとは。

Googleのサービスは色々あるけれど、私が関心の高いGoogle App Engineを例に考えてみると、この話も納得させられます。

クラウドのベンチマークを取ったら Google App Engineは遅くてスケールしにくいという話があります。

余談だけど、セールスフォースのサーバは全部で3000台しか無いらしいです。凄いですね。

今GAEのデータストレージは調子悪いとか、測定方法による有利・不利もあるかもしれませんが、GAEが遅いと言うのは、現時点では概ね正しい認識なのかもしれません。(コスト当りの性能で算出すると結果が変わりそうですが)

GAEのアプリケーションは、ちょっとでもアクセスが無いとスピンダウンするとかの制限やクセがあり、何も考えずに「Googleのインフラが使えるんだからさぞかし速いんだろう」と思って開発していると、期待を裏切られます。

逆に、データベース・トランザクションはRDBMSの得意技であり、プログラミングの技術も枯れています。

要はプログラムやデータの設計そのものを、今までのやり方と変えないといけないのがGAEのKVSです。

AWSやForce.comがRDBMSによるデータ永続化という既存のパラダイムの延長であるのに対し、GAEとそのデータストレージ、およびデータセンターの設計思想は「圧倒的な規模での全体最適によるコスト削減」なんだと思います。

GAEは既存技術より質がやや劣り、安い。最初はコンシューマ向けだけど、コスト面を武器に、少しずつエンタープライズ分野を侵食していき、最終的に品質面をも追い越して、既存技術を駆逐してしまうとすれば、イノベーションの典型的な特徴と符合します。

どっちが良い・悪いという議論には余り意味は無いけど、好き・嫌いでいうと、やっぱりGAEの方が好きだなぁ。